フォーは米から作る平麺。ベトナムでは、街の至るところに屋台や店舗がある国民食の一つです。ベトナムで食べるフォーは、製造されてすぐに食べる「生麺」が主流。米の味わいが深く、もちもちしていて、スープが染み込みやすいなどの特長があります。
一方で、生産したフォーを乾燥させた状態で袋詰めにした「乾麺」のフォーもあります。ベトナムではスーパーなどの小売店で販売されています。日本のベトナム料理店の多くで扱われるのが、ベトナムで作られた乾麺のフォー。生麺に比べるともっちりとした米感が少なく、茹でたときに麺が切れやすくなりますが、ツルッとしたのどごしで食べやすく、最近は改良が進み生麺に近い味わいの乾麺も出てきています。保存が効くため廃棄リスクが少ない点が飲食店にとってはメリットとなります。
まだ日本では珍しい生麺のフォーの生産に挑戦しているのが、株式会社JVF(東京・国立)。自社の生産施設で、独自の生麺ブランド、オリジーPhoを製造し、現在全国のベトナム料理店などに卸しています。現在は、製造日を週3回設け、1日に500kgほど生産。当日午後には全国の取引先に出荷する体制を作っています。
生麺のフォーは以下の流れで製造していきます。
- お米は最大伸びるまで約8時間水に浸す
- 石臼で細かく砕いて米粉にする(温式粉砕)
- 麺のコシを自然と引き出すため、米粉は製造までしばらく寝かす
- 製麺機に入れて平たい生地を作り、蒸す
- 最後に平麺状にカットする
実はフォー、気温や湿度、製造環境が味や仕上がりに大きく影響が出やすい繊細な食品。同社は、ベトナムで製麺の基礎を学んだのち、日本の製造環境に合わせるためオリジナルの製麺機を作り、さらに日本に適した独自の配合で生麺のフォーを作っています。
フォーの原料となる米は現在、日本の提携農家で作ってもらっています。当初はベトナムから輸入していましたが、米は輸入手続きが煩雑。このため日本国内でフォー製造に適した指定品種のベトナム米を栽培してくれる農家を探したところ、運よく見つけることができたといいます。現在は、安定的な価格でフォーを提供するため、最低1年分の米を保管しています。
製造した生麺は袋詰めで出荷。ベトナムでは通常、生麺は翌日までに消費するのが一般的ですが、こちらのフォーは製造で1週間保管できるよう開発しました。ベトナムの本場の生麺の深い米の味わいと、もちもちした食感を日本でも実現すべく尽力。現在は、取引先も拡大中です。